1998年1月22日(木)
23歳
寒い夜。
吉原幸子「同病」より。 ごくふつうに生きてゐる やうに見えて ひとりひとりが ひそかな傷をもってゐる といふことに あらためて驚く Mのなかにも Qのなかにも わたしがゐて MやQと手をとり合って泣いてゐる けれどわたしは わたしのなかに そんなにも多くを 背負へるだらうか わたしもまた 善意によって人を害(あや)めた わたしもまた 六本目の指を持ってゐた スモン病にかかれば スモン病の人が来ていっしょに泣いてくれるのだらう 家が焼ければ 家の焼けた人が来てなぐさめてくれるのだらう ひとつの傷に そっと触れると 同じ傷をもつ人が どこからか名乗り出て 長い手紙をくれる わたしたちは 傷によってつながってゐる しかも 傷によってしかつながれないのだ