1997年12月18日(木)
23歳

何千回と口の中で繰り返した、その詩。

塔 吉原幸子

あの人たちにとって
愛とは 満ち足りることなのに

わたしにとって
それは 決して満ち足りないと
気づくことなのだった

<安心しきった顔>
を みにくいと
片っぱしから あなたは崩す
  ──崩れるまへの かすかなゆらぎを
  おそれを いつもなぎはらふやうに──
あなたは正しいのだ きっと
塔ができたとき わたしに
すべては 終りなのだから

ああ こんなにしたしいものたちと
うまくいってしまふのはいや
陽ざしだとか 音楽だとか 海だとか
安心して
愛さなくなってしまふのは苦しい

崩れてゆく幻 こそが
ふたたび わたしを捉へはじめる
ふたたび
わたしは 叫びはじめる