1997年11月26日(水)
23歳
晩秋の京都にさめざめと雨は降る。
ピアノを弾いていた。
雨が降る日に決まって弾く曲がある。
ウイリアム・ギロックの「Autumn Sketch」。
1分もない、簡単な小品。ピアノを習い始めた子供のために作られた曲。
哀しい、きれいなうた。
時にはAllegro、時にはLentoで目を閉じ弾きながら、
僕は繰り返しさめざめと雨の落ちてくる空を想うのだ。
そうして満足したら
コートと一緒に憂鬱を着込んで近くの公園に濡れにゆく。
口にくわえた煙草に
少しずつその憂鬱がしみこんでいくように。
僕が背負ったもの。
煙とともに空に溶けるもの。