1998年1月10日(土)
23歳
秒針を眺めて。
海に行こう。
実家の近くのさびれた伊勢湾に。
京都からはたった2時間半。
逃げ出すのだ。
逃げたいのだ。
胸が痛む。
「こころなんて内臓さ 内臓が痛むように痛むのさ」
という詩を思い出す。誰の詩だったっけ。
「ひとりが好きなんでしょ?じゃあもう邪魔なんてしない。」
奥崎は言った。
僕は精一杯愛想よくふるまっていたつもりだった。
「寂しい」なんて言えばよかったのか。
言えるわけがない。
胸の痛みはきっとタバコのせい。
胸の奥にごわごわとした手触りがする。