愛する季節、時間帯、日暮れ
とろとろと溶けていきそうな秋、夕暮れ。
ふと気付くと窓の外は暗い。
心の中に不確かな高まりを感じながら、一日何箱めかのタバコを買いに出る。
吉原幸子は「おそろしさとは/ゐることかしら/ゐないことかしら」と書いた。
二十歳を過ぎてから「さびしい」「かなしい」がピンと来なくなりつつある。
それにとってかわったのはどうしようもない不在感。
立原道造「晩秋」より抜粋 あはれな 僕の魂よ おそい秋の午后には 行くがいい - おまへが 友を呼ばうと 拒まうと おまへは 永久孤独に 餓ゑてゐるであらう 行くがいい けふの落日のときまで - すくなかったいくつもの風景たちが おまへの歩みを ささへるであらう おまへは そして 自分を護りながら泣くであらう