1997年10月9日(木)
23歳

創作日記を始めようと思う。

創作日記なんて大袈裟な題をつけてしまった。

気持ちを言葉にするなんて僭越だ。
ましてやそれを人に見せるなど面映ゆい。

思考をまとめる訓練だよ。
なんて嘘。
なにが嘘か。
それは君にだってもうわかっている。

くだらない露悪ではないと思いたい。
そのためには書き続けなければならない。

1997年10月
大学3回生

1997年10月10日(金)
23歳

体育の日 快晴

今日は一日某先輩の作品搬出に費やされる。
しばらく陽の光にあたっていなかったので眩しい。   

2トントラックを素敵な気分で運転しつつ単純な労働作業に身をまかせた。          

空が青ければ青いほど高ければ高いほど、自分の内側に許されない澱みのようなものを感じる。   
いつでも空の青さに嫉妬している。

空の青の深みや許された空間のゆるぎなさを本当に感じることができたら、
僕の創作もきっと閉じて幸せになれる。

1997年10月12日(日)
23歳

日曜の、朝。晴れ

アトリエで酒を飲み、帰る。

昨日、今日とまただらだら過ごしてしまった。
最近だらだらしすぎだ。

調子にのって喋り過ぎた時はいつも嫌な気分がする。
言葉はピアノをもって語ればいい。

愛想だけはよくなった。
まるくなったね、と君は言うけれど
無理しなくなっただけだと心の中で毒を吐く。

酒を抜いて絵を描く。

1997年10月13日(月)
23歳

月曜の、昼。快晴。

また晴れた。秋晴れである。
こんなに晴れが続くなんて日頃の行いがよっぽど悪いに違いない。

いい天気なのが癪なので今日も外に出るのはやめにする。
京都市美術館の主体展に行かなくてはならない。

こんな日のピアノは何がいいだろう。
S.L.WEISSのリュートソナタ集からパルティータを聴く。

晴れていると晴れている人間がたくさんいるので僕は大きな箱をかぶりたい。

1997年10月14日(火)
23歳

火曜の、午前。快晴。

今日も晴れた。納得がいかない。
僕の納得など誰も知ったことではない。

久しぶりにアトリエで油絵に手をつける。
風邪をひいたのか息が苦しい。

風邪じゃないことは自分でもわかっている。
なぜ風邪をひいたことにするのか。
それも自分でわかっている。

ばかやろう。